2025年3月7日公開
最終更新日:2025年3月8日
SaaS(サース)とは? IaaS・PaaSとの違いやメリットを解説
インサイトセールスを行うには、まず提案する自社製品・サービスにおいて深い知識をもつことが重要です。昨今では、SaaSを中心にクラウドサービスを提案する企業が多く存在します。しかし、IT業界にあまり詳しくないと「SaaSってそもそも何?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
本記事では、インサイトセールスに関連が深い「SaaS」について、詳しく解説します。
SaaSとは
まずはSaaSについての基本的な事柄を解説します。
SaaSはクラウドサービスの一形態
SaaS(Software as a Service、サース)は、インターネット上で常時稼働しており、インターネット経由で利用できるソフトウェアのことで、クラウドサービスの形態の一つです。従来ではソフトウェアを利用する場合ライセンス販売されているパッケージを購入し、ユーザーが自身のパソコンにインストールして利用するのが一般的でした。
SaaSでは、ソフトウェアを提供するサービス事業者と利用契約を締結し、料金を支払うことですぐ利用できます。従来のパッケージをインストールする方法と違い、導入しやすいという点も特長です。
▼SaaSのビジネスモデルについては、こちらの記事でも解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
SaaSのビジネスモデルとは? 収益構造やサービスの特徴をわかりやすく解説
SaaSにインサイドセールスが求められる背景
SaaSビジネスにおいては、従来の対面でのセールスよりも、インサイドセールスが求められています。主な背景として、以下が挙げられます。
・SaaSビジネスの特性と親和性が高い
SaaSは、一般的な料金体系としてサブスクリプションモデルが採用されており、長期的に利用するユーザーが多いです。そのような顧客との信頼関係を築くためには、継続的なアプローチが不可欠です。インサイドセールスでは継続的なコミュニケーションをとりやすく、SaaSビジネスに適しています。
・SaaS市場の急速な拡大
2019年は6,000億円だったSaaSの市場規模は、2021年にはパッケージソフトの市場を逆転し、2024年の市場規模は約1兆1,200億円まで拡大するとみられています(※1)。この市場に対して、従来の訪問型の営業を行っていては、移動費用や人件費のコストの増大は避けられません。
インサイドセールスでは、オンラインセミナーをはじめデジタルツールを利用した営業活動を行うことで、営業のコストを抑えられます。
※1 出典:富士キメラ総研 プレスリリース
https://www.fcr.co.jp/pr/20118.htm
・データに基づいたアプローチが可能
インターネットや端末の普及により、オンライン経由で顧客からの情報を容易に収集できるようになりました。例えば、SaaSに対するニーズや満足度なども、訪問せずともオンラインで情報収集できます。
インサイドセールスではデジタルツールを駆使して収集した顧客の情報や課題を分析することで、営業戦略やサービスの改善につなげられます。
SaaS企業におけるインサイドセールスの役割
SaaSにおいてはインサイドセールスは、主に以下の3つの役割を持ちます。
・リードナーチャリング:見込み顧客の購買意欲を高め、受注につなげる
・デモンストレーション:実際にサービスを使用してみせ、価値を伝える
・顧客の潜在課題を引き出す:コミュニケーションによって課題を引き出し、解決策を提示する
SaaSを利用する既存顧客の維持、そして見込み顧客の獲得両方の面で、インサイドセールスは大きな役割を果たします。
▼インサイドセールスの概念や基本的な考え方、具体的な活動内容については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
「インサイドセールス」って何? 定義や役割、職種の特徴や他の営業職との違い、将来性などまとめて解説!
▼SaaSにおける営業職について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
SaaS営業とは? 一般営業との違いや仕事内容・メリット・デメリット・転職に必要なスキルなども解説
SaaS営業への転職はきつい? 職種の特徴や経験した人からやめとけと言われる理由を徹底解説
SaaSにインサイドセールスが効果的な理由
SaaSとインサイドセールスは非常に相性がよく、効果的に機能します。SaaSにインサイドセールスが効果的な理由として、以下が挙げられます。
・オンラインで顧客への迅速なアプローチが可能
インサイドセールスは、デジタルツールを駆使して営業活動を行うことから「地理的制約を受けない」という点でSaaSと同じです。そのため、オンラインでより多くの顧客へ迅速にアプローチを行えます。
・SaaSは無形商材であるため、顧客との対面による営業活動が不要
SaaSでの営業活動全体において、直接顧客と対面する必要がありません。インサイドセールスですべて対応可能であるため、営業コスト削減、業務効率化が図れます。
・SaaSはサブスクリプションモデルが多い
SaaSの料金体系はサブスクリプションモデルを採用していることが一般的です。インサイドセールスで顧客と継続的にコミュニケーションをとることは、既存顧客の維持に繋がります。
SaaSとPaaS、IaaSの違い
ここからは、クラウドサービスにおけるSaaSについて解説します。クラウドサービスには、主にSaaS、PaaS、IaaSの3つのサービス形態があります。さらにクラウドサービスの前身であるASPとの違いについても合わせて解説します。
PaaSとの違い
PaaS(Platform as a Service)は、インターネット経由でアプリケーションの開発および実行に必要な環境(OS、ミドルウェアなど)を提供するサービスです。利用者は、アプリケーション開発に専念することができ、管理する責任も開発するアプリケーションのみです。
IaaSとの違い
IaaS(Infrastructure as a Service)は、インターネット経由で仮想マシンやストレージ、ネットワークなどのITインフラを提供するサービスです。利用者は、クラウド上のITインフラを利用してOSからミドルウェア、アプリケーションなどを自由に組み合わせてシステムを構築できます。
ASPとの違い
ASP(Application Service Provider)は、SaaSの前身ともいえるサービス形態で、インターネット経由でアプリケーションを利用できるサービスです。サービス形態の意味としてはSaaSと同じ意味ですが、ASPはサービスを提供するベンダーのことを指す場合もあります。
SaaSのメリット
従来のパッケージを購入しインストールして利用する場合に比べ、SaaSを利用すると多くのメリットが得られます。ここでは、SaaSのメリットについて解説します。
SaaS関連の営業職、インサイドセールス職に就くことを検討されている方にとっても役立つ基本的な知識となりますので、ぜひ参考にしてください。
複数のユーザーが同時に利用できる
例えばExcelでは、あるユーザーがExcelファイルを編集している場合、他のユーザーが同時に同じExcelファイルへアクセスしたり、編集したりといったことが基本的にできません。しかし、SaaSでは複数のユーザーが同時に編集できる仕組みが備わっています。そのため複数のメンバーで業務を行う際には、SaaSの方が効率が良いといえます。
インターネットに接続できればどこからでも利用できる
従来のようにパッケージをインストールする方法では、インストールしたパソコンでしかそのソフトウェアを利用することができません。オフィスのパソコンにインストールした場合、オフィスに行かなければソフトウェアを利用できません。
SaaSは、インターネットに接続できればどこからでも利用できます。リモートワークもSaaSを利用することで実現できます。
常に最新バージョンが利用できる
ソフトウェアによっては、不具合改修や機能追加を目的としたバージョンアップが提供されます。パッケージをインストールした方法では、最新版のソフトウェアを新たに購入しインストールする必要がありました。
SaaSは、最新のバージョンがサービス事業者から常に提供されており、利用者が意識せずとも利用できます。新たにソフトウェアを購入する必要がなく、その費用もかかりません。
安価に導入できる
SaaSは、サービス事業者と契約すればすぐに利用できます。一般的に月額費用もしくは従量課金であるため、導入時にかかる費用を削減できます。
パッケージを購入する必要がないほか、アプリケーションを利用するためのサーバーやネットワークといった機器を準備する必要もありません。インターネットに接続できるパソコンがあればよいため、初期コストを大幅に削減できます。
管理・保守の負担が少ない
例えば社内システムを構築する場合、サーバーやネットワークの管理やメンテナンスといった保守が必要です。SaaSは、そのようなインフラを用意しなくてよいため、インフラの管理や保守も不要です。
SaaSでは運用に必要な管理や保守はすべてサービス事象者側で行います。利用者が行う必要はないため、管理・保守の負担を軽減できます。
スモールスタートが可能
ソフトウェアによっては、利用ユーザー数で費用が発生する料金体系をとっているものもあります。この場合、最初から多くの人数で利用することなく、少数の人数でスモールスタートすることも可能です。
「普段業務で利用しているソフトウェアを刷新することは大きな影響を伴うため、できればスモールスタートで始めたい」という場合に、SaaSは適しています。
SaaSのデメリット
SaaSは多くのメリットがあるものの、デメリットもあります。デメリットによっては、SaaSを利用するよりもパッケージを購入したほうが良い場合もあります。SaaSの具体的なデメリットについて解説しましょう。
カスタマイズできる範囲が限られている
SaaSは多くの利用者が使えるよう、汎用的な機能が揃っている反面、カスタマイズできる範囲が限定されています。そのため、業務によってはSaaSに必要な機能がない場合も少なくありません。
1からシステムを開発した方が、最も自由度が高くカスタマイズしやすいというメリットがあります。業務内容をしっかり確認し、カスタマイズの範囲によってSaaSを利用するほうがよいのかどうかを判断することが大切です。
セキュリティ対策が必要
SaaSを利用する場合はインターネットの利用が欠かせません。また、重要なデータをサービス事業者が提供するシステムに格納することになるため、セキュリティに懸念を感じる人もいるでしょう。
なるべく利用者が多く、実績のあるサービス事業者のほうが、セキュリティ対策がしっかりなされている場合が多いです。サービスの利用実績や顧客満足度、利用者の口コミなど、事前に情報を確認しておくとよいでしょう。
トラブルが発生するとベンダー依存になる
トラブルが発生しサービスが利用できなくなると、サービス提供ベンダーが対応を行いますが、その間利用者はトラブルの解決を待つしかありません。SaaSだけですべての業務を行っていた場合は、トラブルにより業務が止まってしまうことになります。
万が一SaaSが利用できない場合に備えて、別のサービスもしくは企業内に待機系のシステムを置くなど、バックアップを準備しておくと便利です。
SaaSの代表例
現在では多くのSaaSが存在します。中には、すでに使っている人もいるでしょう。ここでは代表的なSaaSを紹介します。
Officeツール
Officeツールで代表的なものとして、以下があります。
・Microsoft 365
・Googleドキュメント/スプレッドシート/スライド
Microsoft 365はインストールするパッケージ版もありますが、ブラウザで利用できるWeb版も存在します。
オンラインストレージ
インターネット経由で利用できるストレージとして代表的なサービスは以下があります。
・Google Drive
・OneDrive
・Box
無料でも10〜15GB程度利用でき、料金を支払うことで大容量のストレージを利用できます。アカウントがあれば誰でも利用できるため、情報共有にも便利です。
Web会議システム
・Zoom
・Google Meet
・Microsoft Teams
インターネット経由で会議ができるシステムです。無料でも利用は可能ですが、1回の接続時間や最大参加人数に制限があります。
ビジネスチャット
・Slack
・LINE WORKS
・Chatwork
・Microsoft Teams
ビジネスチャットは個人がプライベートで利用するチャットと異なり、セキュリティの強化やタスク管理などの機能追加が実装されています。
プロジェクト管理・タスク管理
・Backlog
・Notice
・Trello
複数のメンバーと業務を行う際に利用するプロジェクト管理ツールです。進捗管理やタスク管理機能があり、プロジェクト全体の状況を把握するのに便利です。
SaaSを選ぶ際に求められるポイント
顧客の購買意欲を高めるには、顧客が求めている情報を正確に説明できることが大切です。では、SaaSではどのような情報が求められるのでしょうか。ここでは、SaaSを選ぶ際に顧客が押さえてくべき内容について解説します。
機能性
業務に必要な機能が揃っているかはもちろんのこと、接続できるデータソースや、他システムとの連携方法についても確認しておきましょう。特に既存システムや他システムから移行する際には、このような接続機能があると大変便利です。
拡張性
複雑な業務や独自性の強い作業にも対応可能な、できる範囲でのカスタマイズ・拡張がどの程度か確認しましょう。例えば、サービスによってはプラグインやアドオンの追加、カスタムアプリの実装が可能な場合もあります。
料金体系
サービスによって利用にかかるコストが変わってくるため、必ず確認しておきましょう。一般的には月額料金または利用ユーザー数による課金です。費用対効果を確認し、適切な料金プランを利用することが大切です。
セキュリティ
サービスによっては、権限の設定やデータの暗号化など、セキュリティ対策が実装されているものもあります。各サービス事業者がどこまでセキュリティ機能を実装しているか、セキュリティ体制を確認しておきましょう。
サポート体制
IT有識者がいない場合は、トラブルがあった場合にサポートに頼ることになります。そのため、サポートとの連絡方法や対応可能時間を確認しておきましょう。連絡方法はメールや電話、チャットなどがあります。海外ベンダーのサービスだと、対応可能時間が日本時間の日中ではない場合があるので、注意が必要です。
導入実績
実績豊富なサービスのほうが機能の充実度やサポート体制がしっかりしており、安心です。口コミや利用実績を参考にし、導入実績が多いか確認しておきましょう。
SaaS導入時に押さえておくべきポイント
いざSaaSを導入するとなっても、ポイントを押さえておかないと導入に失敗したり、導入しても思うように効果が得られなかったりします。ここでは、SaaS導入時に気を付けておくべきポイントを解説します。顧客との商談にぜひ役立ててください。
導入目的・適用範囲を明確にする
SaaSを導入し、どこまでの業務でどこまでの範囲に適用するか、導入前に検討しておくことが重要です。導入目的が明確でないと、導入効果を確認することもできず、導入そのものが目的になってしまいます。
導入当初から適用範囲を広げてしまうと、導入時にトラブルが発生した際の影響が大きくなります。スモールスタートからはじめ、徐々に適用範囲を広げていくのも、方法の1つです。
必要な機能を洗い出す
SaaSを選定する際に、顧客業務に必要な機能があるかどうか確認するために、先にSaaSの適用範囲において対象となる顧客業務を精査し、必要な機能を洗い出しましょう。なるべく細部まで洗い出しておくと、導入時の失敗を防げます。
セキュリティが十分か確認する
サービス事業者のセキュリティ体制および顧客内でのセキュリティ体制を確認し、必要なセキュリティが十分確保できているかを見ておきます。サービスによっては社内にデータをダウンロードできる場合もあるため、社内のセキュリティも十分か確認しておくことが大切です。
管理体制を整える
SaaS導入後も利用者が安心して業務を行えるようにするために、管理体制を整えておきましょう。例えば、以下のような役割を持つ人が必要です。
・利用者のアカウント管理者
・利用者にSaaSの使い方をレクチャーする人
・利用者からの質問に対応する人
事前に体制を整えておくことで、スムーズな導入を実現できます。
SaaSでインサイドセールスを成功させるには
インサイドセールスを成功させるためには、以下の2点をしっかり押さえておくことが重要です。
・顧客視点で提案を行う
SaaSの導入を成功させるためには「SaaS導入時に押さえておくべきポイント」「SaaS導入時に押さえておくべきポイント」を解説しました。これらはSaaSを導入する顧客が押さえておくべきポイントです。インサイドセールスにおいては、このような顧客視点の情報を事前に把握し、それらを踏まえた提案を行うことが重要です。
・マーケティングやフィールドセールスと連携する
見込み顧客を効率よく得るには、マーケティングやフィールドセールスと上手に連携することが大切です。各部門で役割を明確にし分業化することで、顧客に対してきめ細かな営業活動が行えます。
SaaS業界におけるインサイドセールスについては、押さえておくべきポイントがたくさんあります。
▼SaaS業界でのインサイドセールスについて、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
SaaS企業のインサイドセールスの役割とは? 導入メリットや効果を出すポイントを紹介
SaaSの特徴を理解し、効果的な提案を行おう
SaaSはインサイドセールスと親和性が高く、多くのSaaS企業がインサイドセールスを活用しています。しかしインサイドセールスで営業活動を行うには、まずSaaSそのものをしっかり理解し、顧客視点で提案することが重要です。
本記事では、SaaSのメリット・デメリット、選定及び導入時に押さえておくべきポイントを解説しました。
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