2025年7月15日公開
最終更新日:2025年7月15日
SaaSビジネスで受注率を高めるには?基本プロセスからKPI設定、営業戦略の注意点まで解説
SaaSビジネスにおいて、受注率は、売上拡大と成長の根幹をなす重要な指標です。特に競争が激化しているSaaS市場においては、より戦略的に受注率を向上させるための工夫が必要です。
この記事では、SaaS営業における受注率の基本から、効果的な営業戦略、成功事例までを詳しく解説し、成約率を飛躍的に高める方法を紹介します。
SaaSビジネスの特徴
最初に、SaaSビジネスの全体像、およびその特徴について解説します。
SaaSビジネスとは
SaaSビジネスとは、クラウド上で稼働するソフトウェアをサービスとして提供するビジネス形態です。従来のパッケージソフトでは導入やアップデートの手間がかかりましたが、SaaSはユーザーはインターネットに接続できればいつでもどこでも利用可能です。
サブスクリプションモデルの特徴
SaaSはサービスを利用するユーザーからサブスクリプション(定額課金)モデルで収益を上げます。特徴は、契約が続く限り定期的に収益が入る点です。そのため、企業側にとっては収益予測がしやすく、顧客の解約率(チャーン)を低く抑えることで安定した利益が見込めます。
顧客獲得コストとLTVのバランス
SaaSビジネスの成長には、CAC(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)のバランスが極めて重要です。CACは新規顧客を獲得するために必要なコストを指し、一方LTVは、一人の顧客が契約期間中にもたらす総収益です。CACが高すぎると利益を圧迫するため、LTVがCACを十分に上回る必要があります。
目安として、LTVはCACの3倍以上が理想と言われています。つまり、ただ顧客を増やすだけでなく、継続して利用してもらうことがSaaSビジネスにおいて非常に重要です。
SaaSにおける「受注率」の定義
SaaSビジネスを成功させるためには、受注率という指標を正確に理解し、常に改善を図ることが重要です。ここでは、受注率の計算方法およびその重要性について解説します。
受注率の計算方法
受注率とは、営業活動において「商談化した見込み顧客のうち、どれだけの割合が契約に至ったか」を示す割合です。以下の計算式で算出します。
受注率=受注数/商談数
例えば、月間で20件の商談があり、そのうち5件が成約に至った場合、受注率は25%です。
商談件数が多いのに受注率が低い場合は、提案やクロージングに問題がある可能性が高いです。逆に商談数が少なければ、リード獲得や初期対応に改善の余地があります。受注率を把握して営業プロセスの課題を分析することは、効率的に売上を伸ばす上で不可欠です。
なぜSaaSでは受注率が特に重要なのか
SaaSのビジネスモデルの特性上、受注率が特に重要視されます。LTVで利益を上げるためには、確度の高い顧客にリソースを集中させ、受注率を向上させて長期的な売上につながる戦略をとる必要があるからです。
高い受注率がもたらすビジネス上のメリット
高い受注率は、SaaSビジネス全体に大きなメリットをもたらします。例えば、同じ営業コストでも多くの成約が取れるため、CAC(顧客獲得コスト)が下がり、収益性が改善します。また、受注率が安定して高ければ、売上予測が立てやすくなり、事業計画や資金調達の精度が向上します。受注率が高いと大きなメリットがあるため、全社的に注力すべき指標です。
企業の成約率を高めるSaaS営業の基本プロセス
SaaSの営業は、顧客の課題発見から導入後の継続利用までを一貫してサポートするプロセスとして、4つのフェーズを分業化しています。ここでは、それぞれのフェーズと成約率を高めるための具体的なポイントを解説します。
1. マーケティング
マーケティングは、リード(見込み顧客)を獲得するプロセスです。コンテンツマーケティングやウェビナーを通じて、顧客に製品の価値や解決できる課題を説明します。ただ多くのリードを集めるのではなく、ターゲットに最適化された見込み度の高い顧客を集めることが大切です。
2. インサイドセールス
インサイドセールスは、マーケティングが獲得したリードに対して電話やメール、オンライン商談を通じて商談化へとつなげる役割を担います。SFA(営業支援ツール)などのデジタルツールを活用し、効率よくフォローを行うことがポイントです。
3. フィールドセールス
フィールドセールスは、成約に向けて直接顧客と対面またはオンラインで商談を行うフェーズです。インサイドセールスから引き継いだ情報を基に、顧客の具体的な課題に対して製品の価値を提案し、導入後のイメージを共有することが重要です。
4. カスタマーサクセス
成約後のフェーズを担うのがカスタマーサクセスです。SaaSは契約後も顧客がサービスを活用し続けることで収益が最大化します。カスタマーサクセスでは顧客のKPI達成や業務改善が実感できるように活動し、課題があれば迅速に解決を図ります。
KPI設定で見える化する営業活動
SaaS営業ではKPI(重要業績評価指標)を設定して営業活動を数値化し、課題の早期発見や改善につなげることが重要です。ここでは、代表的なSaaS営業のKPI、およびその後に具体的な設計と追跡の方法について解説します。
代表的なSaaS営業のKPI
SaaS営業における代表的なKPIとして、以下があげられます。
- 商談化率:リード(見込み顧客)のうち、商談に繋げられた割合
- 受注率:商談化した見込み顧客のうち、契約に至った割合
- CAC(顧客獲得コスト)
- LTV(顧客生涯価値)
- 解約率(チャーン率)
- アップセル率:既存顧客がより高額なサービスに移行する割合
これらをモニタリングし、営業活動の成果を多角的に評価することが有効です。
KPIの設計とトラッキング方法
KPIを設定したら、それを継続的に追跡(トラッキング)します。例えば、月間受注率を20%に設定した場合、週次で商談進捗を確認し、数値が目標に届かない場合は提案やクロージングの内容を見直します。これにより、組織全体でPDCAを回しながら受注率の改善に取り組むことが可能になります。
受注率を上げるために役立つツール
SaaS営業において受注率を向上させるのには、CRMやMAツールをはじめとする営業支援ツールが役立ちます。この章では、営業効率を高めるツールについて詳しく解説します。
CRMやMAツールの導入
SaaS営業において、CRM(顧客管理システム)やMA(マーケティングオートメーション)は、欠かせません。CRMを導入すると、顧客ごとの商談履歴やコミュニケーション内容を一元管理でき、担当者が変わってもスムーズに提案を継続できます。またMAツールは、ウェブサイトの閲覧履歴やメールの開封状況などを自動的にトラッキングし、見込み度の高いリードを営業に引き渡す仕組みを作れます。これにより、確度の低いリードへの無駄なアプローチを減らし、成約につながりやすい顧客に集中できます。
データ分析の重要性
CRMやMAなどのツールを導入しても、蓄積されたデータを分析しなければ意味がありません。SaaS営業では、商談件数や受注率、商談から成約までのリードタイムなど、あらゆる指標を細かくチェックすることが重要です。例えば、顧客の業種や規模、利用サービスごとの成約傾向を分析すれば、特定のターゲットに対して戦略を講じることができます。このように、どのフェーズで課題が生じているかを特定し、早期に改善策を講じることができます。
営業効率を高めるツール比較
代表的な営業支援ツールとして、以下が挙げられます。
- Salesforce Assistant
- ネクストSFAt
- Sansan
- Zoho CRM
重要なのは、自社の営業プロセスやKPIに合った機能を持つツールを選ぶことです。こうしたツールを上手に活用することで、少ないリソースでも高い成果を生み出し、受注率を大きく伸ばすことが可能になります。
成約率を上げたSaaS企業の成功事例
ここでは、実際に成約率を高めた事例をいくつか紹介します。
国内外のSaaS企業の実例紹介
ある不動産会社では、営業担当ごとに成約率にばらつきがありました。これは個々の情報の連携がなされておらず、教育も属人的であったことが原因です。個人間、組織間で情報の連携がとれていないため、見込み顧客に対して適切なアプローチをとることができず、問い合わせから成約までの期間が長いという課題がありました。
具体的な施策とその効果
対策としてCRMツール「Salesforce」を導入し、顧客の情報を一元管理・共有化しました。これにより、誰でも見込み顧客に対して適切なアプローチが可能となり、問い合わせから成約までの日数を20%短縮、月間売上を1.5倍に向上しました。
事例から学べる営業改善ポイント
事例から学べる営業改善のポイントは「営業プロセスを仕組み化し、顧客ごとに価値を最適化する必要がある」ということです。単に商談を増やすだけではなく、課題に応じた提案を用意し、データを使って最適なタイミングでアプローチすることが重要です。このためには、CRMやMAなどのツールの運用はもちろん、営業とマーケティング、カスタマーサクセスが連携して顧客の成功をゴールに据える体制が不可欠です。
SaaSスタートアップにおける営業戦略と注意点
SaaSスタートアップ企業では、資金が限られ人手も少ない状況の中で、どのようにして最初の顧客を獲得し受注率を高めていけばよいでしょうか。ここでは、SaaSスタートアップにありがちな営業課題と、その解決策となる具体的な工夫について解説します。
起業初期にありがちな営業課題
SaaSスタートアップの営業でよく見られる課題は、ターゲットが曖昧なことです。誰に売りたいのか、どの課題をどう解決するのかが曖昧だと、提案の焦点が定まらず、受注率は上がりません。このような状況では、初期の顧客獲得がうまくいかないために軌道に載せることができず、致命的な問題に発展します。
最初の受注を得るための施策
スタートアップが最初の受注を獲得するためには、顧客の課題理解が不可欠です。顧客に直接ヒアリングを重ねることで、顧客の課題やニーズを深く知ることができます。また、無料トライアルを提案し、実際の業務で使ってもらうことも効果的です。早期導入事例を作れば、以後の営業活動で実績として活用でき、次の成約につなげやすくなります。
小規模チームでも成果を出す方法
少人数のスタートアップで営業成果を上げるには、リソースの集中と情報共有がポイントです。ターゲット市場や業種を絞り込み、提案内容をその業界向けに注力することで、短期間で高い受注率を実現できます。また、少人数だからこそ営業・開発・カスタマーサクセスが密に連携し、顧客への対応速度や柔軟性で大きな成果を出すことも可能です。こうした強みを活かすことがスタートアップ営業の成功につながります。
今後のSaaS営業トレンドと戦略的アプローチ
昨今はAIをはじめとした急速なIT技術の進化により、SaaS営業のトレンドやアプローチの仕方も変わってきています。最後に、今後のSaaS営業で注目すべきトレンドと、それにどう戦略的に対応するかを解説します。
AIや自動化ツールの活用
近年、AIや営業自動化ツールの進化は著しく、SaaS営業にも大きな変革をもたらしています。例えばAIを活用したリードスコアリングは、過去の商談データや顧客行動から成約確度の高い見込み客を自動で抽出し、営業リソースを集中させることができます。結果として受注率を向上させることが可能です。今後、AIや自動化の活用は営業戦略の上で必須の要素となるでしょう。
アカウントベースドマーケティング(ABM)の重要性
ABMとは、特定の企業(アカウント)をターゲットに定め、その企業の状況に合わせた提案を行う手法です。営業とマーケティングが連携し、個別企業に最適化したコンテンツやROIシミュレーションを用意することで、経営層の意思決定を後押しできます。今後、ABMは成長戦略の中核を担う存在となるでしょう。
将来を見据えた営業体制の整備
今後のSaaS営業は、ツールやデータを活用するだけでなく、それを最大限に生かす組織体制の整備が不可欠です。営業・マーケティング・カスタマーサクセスがバラバラに動くのではなく、一貫した顧客体験を提供できるように部門を横断して連携する必要があります。営業・マーケティング・カスタマーサクセスが一体となって動くことで、市場の変化に強い持続可能な営業組織を築けます。
基本プロセスを理解して、SaaSの受注率を高めよう
SaaSビジネスにおける受注率を高めるためには、ターゲットを明確にし、データを活用しながら営業プロセスを最適化することが重要です。また、CRMやMAツールの導入や、ABMやAIの活用など、最新のテクノロジーを戦略的に取り入れることで、限られたリソースでも高い成果を生み出せます。
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